しまね食品バイヤーズカタログ

老舗和菓子店の伝統を守り伝える誇りと挑戦 風流堂 / 島根県松江市 老舗和菓子店の伝統を守り伝える誇りと挑戦 風流堂 / 島根県松江市

伝統を重んじる和菓子の世界が少しずつ変わろうとしている。
100年前の伝統を引き継ぐ「朝汐」をはじめとした和菓子と
若い女性が手に取りやすいよう工夫された、
彩り豊かな一口サイズの羊羹や
地元松江のコーヒー店やチョコレート店とのコラボ商品など。

新旧の可愛いらしいお菓子から、老舗和菓子屋としてお茶席にぴったりな上品さ、
豊かな個性の和菓子達がショーケースに並びます。

伝統の味を守りながらも日々新しいチャレンジも行っておられる
風流堂5代目当主 内藤葉子さんにお話を伺いました。

有限会社風流堂 代表取締役 内藤葉子氏

風流堂の歴史

風流堂は1890年(明治23年)、松江の地で海運業を営んでいた初代の内藤竹次郎が商売替えでお菓子屋を始めたことから始まりました。各土地から職人を招いて、お菓子作りの技法や味を学び習得してきました。

大正7年、松平不昧公の100年忌に合わせて松江の有力者の方から「山川」の復刻の話をいただきました。「山川」は、しっとりとした口当たりが特徴の落雁で、不昧公がとてもお好きだったとされるお菓子ながら、原料となる寒梅粉が松江では手に入れられず。また具体的なレシピ等も残されていなかったことから、風流堂二代目の内藤隆平が四国など各地を巡って研究し、開発を重ねてようやく完成させたと聞いています。

  • 山川
  • 山川の製造作業の様子
※松平不昧公(まつだいら ふまいこう)
松江藩中興の祖とされる、大名茶人として名高い松平家7代藩主の松平治郷(1751~1818年)のこと。お茶、お菓子、お料理のほか、漆芸や陶芸、木工など幅広く文化の振興を図ったとされ、「松平不昧公」の名で今も多くの人に親しまれている。

風流堂の伝統的な和菓子『朝汐』の開発秘話

朝汐

風流堂の代表的なお菓子でもある「朝汐」
日本海の波が岩肌にぶつかり、引いていくときの泡をイメージしたお菓子です。
今から100年ほど前、これも風流堂2代目によって作られました。

皮は大和のつくね芋を1つずつ手作業で皮むきをして使っています。
餡には北海道小豆を使用し、丁寧に皮を取り除いた「皮むき餡」を使用しています。

皮むき餡は、水を加えながら小豆を砕き、皮と実に分離させ、皮を取り除いたものに砂糖を加えて作ります。小豆の皮を剥くには繰り返しの作業など手間と時間がかかりますが、皮を剥くことで雑味のない上品な甘さの餡になります。
この工程は100年前からほとんど変わっていません。

  • 大和芋の皮むき作業
  • 皮むき餡の製造作業
  • 蒸し上がった朝汐

最近では「朝汐」を使ったオリジナルの新商品も手掛けています。
「コーヒー朝汐」は、松江で人気のコーヒー専門店とのコラボ商品です。浅煎りコーヒーの華やかな香りと餡の甘さが好評をいただいています。

2021年には、風流堂を含む松江市内の4社のお菓子屋さんでつくる「松江OKS(お菓子)プロジェクト」に参加。
朝汐をベースとして、果物やお茶などいろいろな地元の素材を使用して、松江城や宍道湖の夕日、出雲大社をイメージした彩りの和菓子「ご縁をむすび® 五縁の味わいひとくち饅頭」を開発しました。

  • ご縁をむすび® 五縁の味わいひとくち饅頭
  • コーヒー朝汐

新しい取り組みとして

14年ぶりに新卒の職人を採用しました。大学を卒業予定の女性から「職人になりたい」と直接連絡があり、未経験の方ながら面談での本人の熱意を受けて採用にいたりました。

最近では、そういった若い人達の意見も取り入れるようにしています。
工場の職人と営業チームとで毎週行うミーティングの中でも、これまで出なかった『和菓子=可愛い』という言葉が使われるなど、変わってきていると感じます。

お客様からのご意見も積極的に取り入れ、たとえば、お菓子そのものは同じでも、食べやすい大きさにする。食べ切れる数にするなど、変更を加えた商品もあります。

  • 遊びかん
  • 風と森のシベリア

風流堂のおすすめの商品

松江銘菓としてやはり「朝汐」が一番人気です。
皮むき餡を使うなど風流堂ならではの方法を使い、材料の配合や、水分の残し方、硬さなど、原料の状態や気候などに合わせて調整し、フレッシュな感じが出るように手間暇かけて作っています。

風流堂の伝統の味や方法は守りながら「風流堂の味」と言われ続けるように。
私たちが幼少期から味わっている、この味をいつまでも大切にしたいと思っています。

海外の方に向けては「餡」を使ったものを検討しているところです。
カラフルな「遊びかん」はニューヨークでもお出ししたこともありますが、やはり日本の和菓子の命である「餡」を使ったものを伝えていきたいです。
小豆の赤は魔除けといった日本人が大切にしている小豆文化も知ってほしいと思います。

  • 伝統ある技や味を広く世界に伝えたいと松江市の菓子メーカー7社が集まりJAPANブランド育成支援事業「松江・和菓子モダンプロジェクト」として2004年から開発を進め、これまでに数回ニューヨークで販売会などを実施し好評を得てきた経緯がある。

バイヤーの方に向けたPR

松江の伝統的な和菓子を守り作り続けるのはもちろんですが、これまで和菓子にあまり縁のなかった若い人達に向けたお菓子を開発するなど、新しいチャレンジは日々行っています。
島根にたくさんある美味しいものを、もっと全国の方に知っていただきたい気持ちは強く
今後は季節ごとのフルーツ大福などにも力を入れていきたいと思っています。

また、県外のバイヤーさんにはぜひ一度島根を訪れていただきたいです。
島根の素晴らしい自然や風景を実際にご覧いただいて、風流堂のお菓子や素材が、こんなにも良い環境で作られていることを皆さんにも知ってほしいです。
もちろん、その際は風流堂の工場見学も忘れずにお願いします。

取材を終えて

見学させていただいた製造現場では、材料の皮を剥く、生地を練る、餡を包む、模様を描くなどの工程の多くが、今もなお職員さんの手作業よって行われていました。
人の手で作られる分、各工程はとても丁寧で、品質も徹底されています。

本店工場での作業風景

「路芝(みちしば)」というお菓子づくりでは短冊状にした求肥をひねって成形する工程があるのですが、熟練の職人さんの手によって、一つずつひねって綺麗に並べられる作業のなか、ときどき商品が弾かれていきます。良品との違いがわからず、話を聞くと「ひねり具合に微妙な差があるため店頭に出せない」とのこと。細部にまでわたる職人さんの強いこだわりを感じた場面でした。

「路芝」のひねり作業の様子

当主である内藤さん、以前は航空会社に勤務されていました。
国際線での経験を活かして海外の人がどんなものを求めているかを考え、将来的には海外の人にも喜ばれる和菓子を作りたいと語るお姿からは、会社一丸となって伝統の和菓子を守り伝えるという誇りと、そこから新しい物を生み出そうとする熱意の両方を感じることができました。

有限会社 風流堂の商品一覧

商品写真をクリックすると商品詳細がご覧いただけます。

有限会社 風流堂
  • 松江市矢田町250-50
  • TEL 0852-21-2344
  • 営業時間 8時30分~17時
  • 定休日 なし(但し日曜日は13時~17時の営業)
  • 一部写真提供:風流堂(無断転載禁止)

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