1930年に緑茶と抹茶の専門店として私の曾祖父が創業しました。
戦時中は緑茶や抹茶のお茶文化は贅沢品と言われ休業を余儀なくされました。
どうしたらいいかと思ったとき、地元でお茶の代わりとして古くから広く親しまれてきた「カワラケツメイ」を使った「ざら茶」の販売を本格的にスタートしました。

島根県の西端、山口県との県境に位置する津和野町。
カワラケツメイを使ったお茶は、江戸時代以前から地元津和野地区の日常の飲み物として親しまれてきました。
原料となるカワラケツメイは河原などに自生していて、それぞれの家で刈り取り、干して、煎ることでお茶になります。
山に囲まれた一部のエリアでしか飲まれてこなかったものですが、1970年頃からの観光ブームによって、津和野のお土産品のひとつとして広がり、町内外にも知られるようになりました。

香味園では、カワラケツメイを契約農家さんに栽培してもらっていて、まだ豆鞘に種がしっかりと残っている早いタイミングでの刈り取りをお願いしています。それが「ざら茶」の甘みのもとになっています。
また、焙煎時に火を強く入れないことで豆の甘みをより残しています。

カワラケツメイを使ったお茶は他の地域にもありますが「ざら茶」と呼ぶのは津和野だけです。
「ざらざら」とした手触りと混ぜた時の音からきているものです。

ノンカフェインなので、時間を気にせず夜でも召し上がっていただけますし、栽培時には農薬も化学肥料も不使用のため、赤ちゃんからご高齢の方までどなた様にも安心して楽しんでいただけます。

夫がフランス出身であることが大きいです。
夫の母国フランスではハーブティーを日常的にみんなが楽しんでおり「食事や気分、体調にあわせて飲み物を選ぶ」というのが暮らしに根付いています。
体調が優れないときなどは症状に合わせてハーブを調合してくれるハーブ薬局やフィトテラピー（植物療法）があります。

香味園では、食事によってワインをペアリングするように、合わせる食べ物や飲む時間、体への効能を考え、手作業でハーブや漢方とお茶をブレンドしています。
和洋にとらわれることなくブレンドできることも香味園の強みです。

また、定期的にワークショップも開催しています。
毎回10～15種類ほどの、その季節に適したお茶やハーブを集め、それぞれの効能や香り、味わいなどを学んでいただき、ご自身の気分や体調に合ったお茶をブレンドして楽しんでもらっています。
これまで県内外の多くの方にご参加いただき、最近ではオンラインで参加される方もいらっしゃるなど、お陰様で大変好評をいただいています。

お茶といえば、ペットボトルで飲むものという方が増えています。
ペットボトルやティーバッグでもお茶の楽しみ方の一つではあるのですが、茶葉やハーブの持つ効能やメリットや、お茶を淹れる時間そのものの楽しみ方ををご存じない方も増えているように感じています。

日々の食事を楽しむために、その日の気分や体調に合わせて、“お茶を選ぶ”ということ、そのお茶を飲むことで得られる効能や魅力についても、もっと知ってもらいたいと思っています。

忙しい毎日の中で、ほっとリラックスしていただく。
お客様一人ひとりに合わせたお茶と、それを楽しむひとときのお手伝いができると幸せですし、当店の目標でもあります。

『父の故郷のために何かがしたい！』と、生まれも育ちも大阪であるリコッタさんが津和野に来て6年目。お話を伺っている最中にも道行く人々が皆ニコニコと手を振っていかれることが何度かあり、町の皆さんにすっかり愛されていることが伝わってきました。

地域の方々に支えられてきた上領茶舗は、2023年春、創業当時（1930年）に店舗があった津和野の本通りへ移転予定。現在は新店舗となる古民家をリノベーション中です。

『新設されるカフェスペースでは、地元のおすすめ食材やスイーツなどを楽しめるようにして、SLに乗ってこられた小さなお子様から地元のおじいちゃんおばあちゃんまで、誰にでも優しいお店にしたい』とリコッタさんは素敵な笑顔でお話しくださいました。